糖尿病の基礎知識と2つの主要な型
糖尿病とは、血糖値が慢性的に高い状態が続く疾患です。インスリンというホルモンの分泌または作用の異常によって、血糖のコントロールがうまくいかなくなります。
糖尿病には主に以下の2つの型があります
1型糖尿病
自己免疫の異常により膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなるタイプ。若年期に発症するケースが多くみられます。
2型糖尿病
インスリンの分泌量が不足したり、効きが悪くなったりするタイプで、日本人の糖尿病の約95%を占めます。中高年で発症することが多く、生活習慣の影響が大きいとされています。
遺伝との関係:科学的な根拠と影響する遺伝子
「糖尿病は遺伝するのか?」これは多くの患者さんが気にする点です。答えは「遺伝的要因はあるが、それだけでは発症しない」ということです。
家族歴があるとリスクは高まる
両親のどちらか、または両方が2型糖尿病の場合、その子どもが糖尿病になるリスクは2〜3倍程度になると報告されています。ただし、全員が発症するわけではありません。
科学的に関連が認められている遺伝子
近年の研究により、糖尿病と関連する遺伝子がいくつか特定されてきました。代表的なものは以下の通りです。
TCF7L2(Transcription Factor 7 Like 2)
この遺伝子の変異があると、インスリン分泌の機能が低下し、2型糖尿病の発症リスクが高まるとされています。
KCNJ11
この遺伝子はインスリン分泌に関与するカリウムチャネルをコードしており、変異によって膵臓のβ細胞の働きが変化します。
SLC30A8
亜鉛の輸送に関係し、インスリンの貯蔵と分泌に影響を与えると考えられています。
これらの遺伝子があったとしても、発症するかどうかは生活習慣に強く影響されることがわかっています。
遺伝的リスクを持つ人がすべき対策と生活習慣
「家族に糖尿病の人がいるから不安」と感じている方へ、生活習慣を整えることでリスクは確実に下げられます。
今日からできる主な対策
- ● 食事:低GI食品・糖質の順番を意識
- ● 運動:有酸素運動を週3回以上
- ● 睡眠:毎日7時間を目安に確保
- ● 検診:年1回以上、血糖やHbA1cを確認
- ● 体重:BMI23以下をキープ
小さな習慣の積み重ねが、将来の発症リスクを下げます。
医師からのメッセージ:遺伝は運命ではない
私は開業医として多くの糖尿病患者と接してきましたが、生活習慣の見直しで血糖値をコントロールできるようになった例を多く見てきました。
確かに遺伝的素因は存在しますが、それは“発症しやすさ”にすぎず、決して運命ではありません。
むしろ、遺伝的リスクを知っていることは早期対策のチャンスとも言えます。
糖尿病は「知識を行動に活かすことで予防できる病気」です。リスクを理解し、日々の生活を丁寧に過ごすことが、健康な人生につながります。
まとめ
糖尿病は遺伝的要因と生活習慣が複雑に関わる病気です。
特に2型糖尿病では、「TCF7L2」などの特定の遺伝子がリスクに関与することがわかっていますが、発症には生活習慣の影響が大きく関わります。
家族歴がある方も、栄養バランスの良い食事・適度な運動・十分な睡眠を意識することでリスクを下げることが可能です。
遺伝は変えられませんが、生活習慣と行動は今日からでも変えられます。正しい知識と意識を持ち、将来の健康につなげていきましょう。