糖尿病とインスリンの基本知識～正しく理解して、安心して治療を続けるために～

糖尿病とは？

糖尿病は、血液中のブドウ糖（血糖）が慢性的に高い状態が続く病気です。血糖は体のエネルギー源であり、筋肉や臓器が活動するために必要ですが、過剰になると血管を傷つけます。

糖尿病の主なタイプ

インスリンの役割

インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖を体の細胞に取り込ませる働きを持ちます。健康な人では、食事をすると血糖が上昇し、それに応じてインスリンが分泌され、数時間以内に正常に戻ります。

糖尿病では、このインスリンの量が不足したり、効きが悪くなって（インスリン抵抗性）血糖が下がりにくくなります。これが長期間続くと、血管がダメージを受けて合併症が起きます。

なぜインスリン注射が必要になるのか？

糖尿病の治療は、まず食事療法・運動療法から始まります。それでも血糖コントロールが不十分な場合、飲み薬（経口血糖降下薬）やGLP-1受容体作動薬などの注射薬を使います。さらに血糖が高い場合や急激に悪化した場合にインスリン注射が必要になります。

インスリンが必要な主なケース

「一度始めたら一生やめられない」は本当？

よくある誤解ですが、必ずしも一生やめられないわけではありません。

例えば、インスリン分泌が一時的に低下している場合（感染症や手術前後など）には、回復後に飲み薬や生活習慣の改善だけで管理できることもあります。ただし、膵臓のβ細胞がほとんど機能していない場合（1型糖尿病や長期の2型糖尿病など）では、インスリンを続ける必要があります。

インスリン治療の種類

インスリンは作用の速さや持続時間によっていくつかの種類があります。

患者さんの生活リズムや血糖パターンに合わせて組み合わせます。
※2025年からは週1回のインスリンも登場予定です。

インスリン治療で注意すべきこと

低血糖

インスリンを打ちすぎたり、食事量が少なかった場合に血糖が下がりすぎることがあります。

注射部位

腹部・大腿部・上腕などを使いますが、同じ場所に打ち続けると皮下脂肪が硬くなり吸収が悪くなります。部位をローテーションすることが大切です。

保存方法

未開封は冷蔵庫、開封後は室温（直射日光や高温を避ける）で保管します。

インスリン治療を続けるメリット

• 🌿 血糖コントロールを改善し、合併症のリスクを減らす
• 🌿 体重減少や疲労感などの糖尿病症状を改善
• 🌿 感染症や手術時の回復を助ける

糖尿病の合併症（網膜症・腎症・神経障害）は、一度進行すると完全に元に戻すことは難しいですが、インスリンを含めた適切な治療で進行を抑えることができます。

生活習慣の改善は必須！

まとめ

糖尿病とインスリン治療について正しく理解しておくことは、安心して治療を続けるためにとても大切です。

インスリンは「最後の手段」ではなく、「血糖を安全にコントロールするための有力な選択肢」です。自己判断で避けるのではなく、医師と相談しながら、自分の生活に合った治療法を見つけていきましょう。