睡眠不足を引き起こす背景
睡眠不足は現代人が抱える深刻な問題の一つです。睡眠が十分に取れていないと、生活習慣病のリスクが著しく高まることが研究で明らかになっています。
当院では睡眠時無呼吸症候群を専門とする外来を行っており、睡眠不足に関するさまざまな悩みを日常的にお聞きしています。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査(令和元年)」によると、男性の37.5%、女性の40.6%が6時間未満の睡眠であり、「睡眠の質に満足できなかった」と回答した人は男性21.6%、女性22.0%にのぼります。また、「日中、眠気を感じた」人も男性32.3%、女性36.9%と、高い割合を示しています。
睡眠確保を妨げる主な理由
- 🔸 20代…「就寝前の携帯・ゲーム・SNSなどに熱中」
- 🔸 30~40代男性…「仕事による夜更かし」
- 🔸 30代女性…「育児で自由な睡眠時間がとれない」
以前は「テレビを観る」が主な夜更かしの要因でしたが、現在では「スマートフォンを見る」ことが中心に。スマホは画面との距離が近いため、より睡眠への悪影響が強くなっています。
睡眠不足が生活習慣病を引き起こす理由
ホルモンバランスの乱れ
レプチンとグレリンのバランスの崩壊が関与します。ともに食欲に関連するホルモンですが、
レプチン:食欲を抑制 グレリン:食欲を促進
とお互いに補完しあう関係性です。睡眠不足になると、レプチンの分泌が減少し、グレリンの分泌が増加します。これにより食欲が増え、特に糖分や脂肪分が多い食品への欲求が高まり、食欲がセーブできず、栄養は十分に足りているが満足せず過食になり肥満につながります。遺伝的に好物であるものに対してセーブが効かなくなる傾向があります。みなさんも深夜の過食や寝不足なのに、食欲はいつも以上にあることを経験したことはないでしょうか。
また、睡眠不足は成長ホルモンの分泌も妨げます。成長ホルモンは筋肉量を増やし、脂肪を減らす役割があり、その分泌が減少することで体脂肪が増えやすくなります。
インスリン抵抗性の増加
睡眠不足はインスリンの効きを悪化させます。インスリンは糖分を体内の細胞に取り込み、血糖値を下げる働きがありますが、睡眠不足によってインスリンの効果が弱まり、血糖値が高い状態が続くようになります。これは長期的に糖尿病を引き起こす可能性があります。
睡眠不足によって引き起こされる糖尿病のほとんどは2型糖尿病に分類されます。2型糖尿病は膵臓からインスリンはでているが、肥満の影響でインスリンが十分に作用せず、血糖値が高くなる状態です。その状態が長く続くと膵臓からインスリンをだすことができず、絶対的なインスリン欠乏となり、1型糖尿病のリスクが高まります。そうなると、毎日インスリンがないと生きていくことができません。
高血圧や動脈硬化の進行
睡眠不足は交感神経を刺激し、血圧を上げる作用があります。高血圧は心臓病や脳卒中など深刻な疾患を引き起こすリスクを高めます。さらに睡眠時無呼吸症候群を合併すると、睡眠中の血圧が高くなる傾向があるため、就寝中の脳卒中、心筋梗塞のリスクが高くなります。自分でできる改善策を1か月行っても改善できない方は必要に応じて、睡眠に関する専門知識をもつ医療機関への相談を検討しましょう。
さらに睡眠不足は、免疫力の低下、認知機能の低下、集中力や判断力の低下など、生活の質を大きく損なう問題も引き起こします。睡眠時間が不足すると、身体が修復・回復する時間が足りなくなり、疲労やストレスが蓄積されやすくなります。
睡眠不足を引き起こす主な原因
睡眠不足にはさまざまな原因がありますが、主な要因を以下に示します。
- 💭 ストレスや不安
日々の仕事や人間関係のストレス、将来への不安が睡眠の質を悪化させることがあります。 - 🕒 不規則な生活リズム
シフト勤務や夜型生活は体内時計を乱し、睡眠不足を引き起こします。 - 💡 電子機器の長時間使用
スマートフォンやパソコンなどから放出されるブルーライトは、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を妨げ、寝つきを悪くします。 - 🏃 運動不足
運動不足は睡眠の質を低下させ、眠りを浅くします。 - ☕ カフェインやアルコールの摂取
過度なカフェインやアルコールの摂取は、睡眠の質を著しく低下させることがあります。
また、寝室環境の悪化や、栄養バランスの悪い食事、夜間の過食なども睡眠不足を引き起こす原因として挙げられます。
睡眠不足を改善するための5つの方法
睡眠不足を改善するためには、以下の6つのポイントを意識しましょう。
規則正しい睡眠スケジュールの確立
毎日決まった時間に寝て起きることで、体内時計が整い、睡眠の質が向上します。休日でも平日と同じ時間帯で生活することを意識しましょう。最低でも6時間、できれば7時間以上の睡眠時間を確保できるように計画的に1日のスケジュールを作りましょう!
寝る前の電子機器の使用を控える
就寝の1〜2時間前からはスマートフォンやパソコンの使用を控え、ブルーライトの影響を軽減しましょう。これによりメラトニンが正常に分泌され、睡眠の質が高まります。いつまでもスマホを使用することで就寝時間が遅くなり、当然睡眠時間も短くなります。
快適な睡眠環境を整える
寝室を静かで暗く快適な温度に保ち、リラックスできる寝具を選ぶことが重要です。また、寝室を睡眠専用のスペースにすることで脳がリラックスしやすくなります。温度、湿度、においなど快適に睡眠をするために重要な要素があります。睡眠の質が良くないと感じたら、ちょっとした変化を重ねることで改善することもあります。
カフェインとアルコールの摂取を制限する
特に午後以降はカフェインを含む飲料を避けるようにしましょう。また、アルコールも寝つきをよくするように思えますが、睡眠の後半に質を低下させることが多いため、摂取量を控えることが大切です。コーヒー、栄養ドリンク、飲酒についてはあらかじめ適正内で収まるように自分で何杯までなら飲んでよいか決めて置きましょう。決めた通りいかない場合にはカフェイン依存、アルコール依存が疑われるので、医師に相談してみましょう。
適度な運動習慣を取り入れる
日中に軽い運動を行うことで、夜間の睡眠の質を向上させることができます。散歩やストレッチ、ヨガなどリラックス効果のある運動を継続的に行いましょう。運動の方法がわからない場合はyoutubeの動画やインターネットで有効な運動方法を参考にするのもいいでしょう
睡眠は生活習慣病の予防だけでなく、心身の健康を維持するためにも重要です。日々の睡眠習慣を見直し、健康的で快適な毎日を送りましょう。
当院は患者さんの内科的治療はもちろんのこと、病気にならないようにする、処方だけに頼らない「予防医学」に注力したクリニックです。併設したメディカルフィットネスジムと協力して、診察以外の時間も患者さん、利用者さんに付き添い、日常生活に溶け込んだ医療を提供します。
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まとめ
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